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莫 邦富 : 「マスク狂騒曲」を利用して荒稼ぎに走る、在日中国人社会の裏の顔

原文出處:【DIAMOND ONLINE】(所有圖文版權皆屬原著作權人所有)

飛ぶように売れるマスク 荒稼ぎをする人々も

湖北省武漢市から広がった新型コロナウイルスの猛威が、中国だけでなく、日本をはじめ多くの国々にも深刻な影響を与えている。日本政府はチャーター機を派遣し、武漢にいる日本人およそ700人の退避計画を実行に移した。

感染症を理由とするこうした措置は初めてといわれている。これまで湖北省に限っていた同地方滞在歴のある外国人を入国拒否にし、13日午前0時から直近の浙江省滞在経験者も対象に追加した。

一方、2月12日の時点で、新型コロナウイルスの集団感染が確認されたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」では、新たに乗客・乗員39人と検疫官1人の感染が発覚し、感染が確認された乗客と乗員は合わせて174人となった。

こうした状況を見た日本政府は、感染者がいる恐れのある旅客船に対して、閣議了承を経ずに乗船している外国人の上陸を拒否できるよう、関連措置の行使を簡素化できるようにした。

武漢などで見られた新型コロナウイルスの猛威を1日も早く抑えるために、多くの日本の地方自治体、企業、在日中国人社会も、マスク、防護服、体外体温計などを集めて、中国に寄付したりする支援活動を進めている。

日本は中国以外で、新型コロナウイルス感染者が最も多い国になったのを受け、マスクが飛ぶように売れている。ドラッグストア、コンビニ、薬局などでマスク完売の告知が貼り出されている光景が見られる。花粉飛散の季節が近づきマスクの需要が高まるなか、マスクの買い占めなどをしないようにという自制の声が、在日中国人社会からも上がっている。

しかし、こうしたマスクの特需をビジネスチャンスと捉え、荒稼ぎをしている在日中国人が暗躍している。ここ数日、中国版SNSのWeChatで京都に住む女性経営者がその1人として、一躍「超有名人」となった。

ネット上ですでにその本名や会社名が公開されており、本人も実名でSNSや動画などを使って応対しているので、本稿ではあえてその氏名を伏せずに紹介する。

SNSでマスクの横流しを自慢 炎上した女性経営者の「言い訳」

京都で美希堂という外国人医療サービス関連の会社を経営している平岩美希氏(中国名は何麗、四川省出身)が、「京都のドラックストアからマスクを買い占めたり、愛寿会同仁病院関係者にマスクを横流ししてもらったりして、中国に転売し、2000万円もの大金を荒稼ぎできた」といった内容を、SNSで自慢しているのだ。

その商才を証明するために、愛寿会同仁病院関係者にマスクの横流しを頼むSNSでのやり取り、焼き肉に招待する光景、同病院からマスク5箱を台車で搬出する現場を写真付きで吹聴していた。

さらに、転売した処方薬の写真も見せびらかしていた。こうして手に入れた2000万円の現金の札束も、ご丁寧に並べて自慢した。

本人はそれを「自らの商才」として自慢したつもりだったが、中国国内も在日中国人社会も、そのあまりにも破廉恥な行動に激怒し、批判の集中砲火を浴びせた。「違法行為」として、他の在日中国人により入管、警察、役所の関係部署にも通報された。

最初は強気に反論していた本人は、やがてネットの炎上ぶりを見て、慌てた。急いで在日中国語メディア関係者の手を借り、動画などを通して自己弁解し、「これまでSNSで公開していた内容はすべて冗談のつもりで書いたものだ」と逃げようとした。

在日中国人社会の事情通によれば、はたしてこの女性がマスクで2000万円の現金を稼げたのかどうかはさておき、「こうしたマスクなどの救援物資で数億円を稼げた人もいる」という。

実際に2月11日、小春日本というサイトから、使用期限が過ぎ処分に付された防護服600万着を、ラベルの貼り替えなどで新品に装い、中国に高価で転売した周教授という一家がいた、と暴露された。

当初、周教授とその関係者はWeChatのモーメンツに「マスク、防護服、防護ゴーグルなどの物資がたくさん入っている」という情報を拡散していた。それを見て、在日中国人ビジネスマン数人が接触してみたが、周教授は「防護服が600万着もある。マスクは無数」と説明したうえで、「ただ、取引は現金のみ。会社口座への振り込みには応じない」という条件を提示した。

在日中国人ビジネスマン数人が、数千万円の現金を集めて、草加にある倉庫へ買い付けに駆けつけた。ところが、草加の倉庫で目にした光景に絶句した。防護服、マスク、防護ゴーグルのダンボール箱は山と積まれているものの、その使用期限はとっくに過ぎていたのだ。現場にある防護服のパッケージを手にすると、その生産日は平成21年(2009年)のものだった。

現場の作業は非常に雑で、一部の防護眼鏡が黄色く色づき始め、まったく使えなくなっていた。その現場では、日給1万円で集められたアルバイトの中国人留学生などが古いラベルを剥がし、日付の新しいものに貼り直して梱包し、発送する作業をしていた。

「守るべきラインはあるはず」善意の変質に同胞も憤る

在日中国人ビジネスマンが、こうした商品を写真や動画に撮り、中国国内の医療機関に送って使用できるのかと確認したところ、「使用期限切れの防護服などは医療現場では使えない」という回答が返ってきた。周教授とその家族が手を出しているきわどいビジネスモデルに憤慨した在日中国人ビジネスマンは、告発に踏み切った。

その動きを察した周教授らが告発を阻止しようとして、在日中国人ビジネスマンたちを脅迫した。しかし、私の取材に対して在日中国人ビジネスマンたちは、「私たちは現場の写真、動画などをすべて証拠として持っている。なにも恐れていない。金もうけは別に悪いことではない。しかし、守らなければならないラインはあるべきだ」と心境を語っている。

新型コロナウイルスの感染から身を守るためのマスク特需が、いつの間にか一部の悪質な在日中国人による「荒稼ぎ」に利用され、マスク狂騒曲へと変質していく。このマスク狂騒曲に関する取材の中で、私は在日中国人社会の「善と悪の両面」を同時に見た思いがした。

そして、マスク狂騒曲に走っていた人間の中に、実は一部の日本の医療機関も、日本人医療関係者も、そして日本人ビジネスマンも加担していることを指摘したい。

(作家・ジャーナリスト 莫 邦富)