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台灣史

Yoshiyuki Ogasawara:中国 「92年コンセンサス」の国民党の定義を否定


中国人民政治協商会議の機関紙『人民政協報』は9月10日,「根本から正す,92年コンセンサスの歪曲は許さない」という評論を掲載した。

内容は,国民党が「92年コンセンサスは一中各表である」と解釈していることを「概念のすり替えだ」と批判し,「『92年コンセンサス』には『一中』があるだけで『各表』はない」と主張する。

論拠として,1949年に中華人民共和国が中華民国に取って代わったこと,1971年の国連決議とその関連機関(WHO)の決議で「台湾当局はいかなる形式でも政府の地位を享受しない」ことが明確に示されたことを挙げる。これは8月に発表された「台湾白書」と同じ論述である。

「92年コンセンサス」の定義については,2017年の共産党19回大会で「一つの中国原則を体現する『92年コンセンサス』」という用語が確立,さらに,2019年の演説で習近平が「海峡両岸は共に一つの中国に属し,共同で国家統一を目指す努力をするという『92年コンセンサス』」と定義したことで,すでに国民党の「一中各表」は否定されている。

今回の『人民政協報』評論はこれまでの中国の主張を長々と述べているのだが,新たな特徴は,『92年コンセンサス』には『各表』はない」とダメ押し,さらに「国民党の高層が概念をすり替えた」と踏み込んだことだ。国民党の主張の核心を完全否定する評論ということができる。

中国は,国民党が台湾でどういう立場にあるかということをすでに気にしなくなったということであろう。胡錦濤時代の中台関係に存在していたあいまいな余地は,習近平が着々と狭めてきた。もはや,「92年コンセンサス」を取り上げて論じる意味はほとんどなくなった。

中國《人民政協報》9月10日發表題為〈正本清源,"九二共識"不容歪曲〉的文章。內容為「"九二共識"只有"一中",沒有"各表"」,徹底否定國民黨的立場。中國共產黨一直主張「"九二共識"是海峡兩岸均堅持一個中國原則的共識」,不認同國民黨的解釋。這篇評論進一步指出「國民黨高層偷換概念,在提到"九二共識"時,將其進一步稱為"一中各表的九二共識"」。這個說法比以前更明確否定國民黨的立場。

這篇文章傳達的訊息應該是北京方面不在意國民黨在台灣的立場,推遲統一的障礙都要清除的企圖心。從海外學者的觀點來說,以後討論"九二共識"已經幾乎沒有意義。

原文出處 Yoshiyuki Ogasawara