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「私はゴーンの右腕ではない」 側近と呼ばれた元役員、判決前の独白


日産自動車の元会長カルロス・ゴーン被告(67)が巨額の役員報酬を開示しなかったとされる事件で、共犯に問われた元代表取締役グレッグ・ケリー被告(65)に対し、3月3日に判決が言い渡される。元会長が海外に逃亡し、1人で無罪を訴えることになったケリー元役員。判決を前に朝日新聞の取材に応じ、「私はゴーンさんの右腕ではない」と語り元会長との共謀を否定した。

「お父さん、ゴーンさんが日本を去った」。ケリー元役員は2019年末に米国にいる息子がかけてきた電話が忘れられないという。「本当に驚いたし、ショックだった」

「お父さん、ゴーンさんが」 息子の電話で知った逃亡
箱に隠れてプライベートジェットで脱出した逃亡劇は「巧妙。彼は日本から出たいと思っていて、うまく出て行った」と表現した。取り残された恨みはないのか――。ケリー元役員は「彼が裁判にいてくれれば良かったと思っている。そうすれば『未払い報酬』を受け取る予定などなかったと自ら説明してくれただろうから」と語った。

「未払い報酬」は裁判の最大のポイントだ。検察側はこう主張してきた。

《1億円以上の報酬を得た役員と金額を個別開示する制度が10年に導入されると、ゴーン元会長は「高額だ」という批判を懸念。半分ほどの支払いを延期し、延期分は有価証券報告書(有報)に記載しなかった。この「未払い報酬」は10~17年度の8年間で計約91億円に上り、大沼敏明・元秘書室長(63)=検察と司法取引=が累積額を管理し、ケリー元役員は退任後に偽の名目で支払う方法を検討した》

「そもそも罪なんて存在しない」。ケリー元役員は取材で何度も繰り返した。

1人で訴えた無罪
元会長の報酬は大沼氏の担当で自分はよく分からないといい、「3人で話し合ったことは一度もない」と共謀を否定。「私が関わった限りでは、延期された報酬はなかった」と語った。

さらに、退任後の処遇の検討は未払い報酬の補塡(ほてん)が目的ではなく、報酬が減って退社するリスクがあった元会長を「競合他社に行かせず日産につなぎ留めておくため」だったと強調した。しかも「支払いを強制する確定的な合意は何もなされなかった」と述べた。

「側近」は自分ではない 代わりに挙げた名前は…
ケリー元役員は元会長の「側近中の側近」とされてきた。検察側は「ゴーンの信頼が厚いケリーにしか担えない役割」だと指摘した。だが、こうした見方に異を唱えた。「私は彼の右腕ではなかった」

原文出處 朝日新聞