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新型コロナウイルスへの政府の対応を巡り批判が相次いでいる。小泉進次郎環境相と森雅子法相、萩生田光一文部科学相が、対策会議より私的な会合を優先させていたことが、国会の審議で発覚。多数の乗客が感染した大型クルーズ船についても、専門家が問題点をネットで告発した。
政府は適切な対応をとっているとPRに必死だが、国内の感染者は増え続けており、信頼回復は難しそうだ。
政府の第10回新型コロナウイルス感染症対策本部の会議が、2月16日(日曜日)に首相官邸であった。小泉環境相は欠席し、環境政務官が代理で出席した。小泉環境相は、地元の神奈川横須賀市であった後援会の新年会に出席していた。
このことを2月18日の衆院予算委員会で質問されたが、「危機管理は万全だった」などと繰り返し、明確に謝罪することはなかった。
2月19日の同委員会で改めて事実関係を質問され、お酒が出る新年会に出ていたことを認めた。小泉環境相は野党側からの追及を受け、次のように事実上の謝罪に追い込まれた。
「地元の会合への出席は問題であるとの指摘については、真摯(しんし)に受け止め反省しています」
さらに同委員会では、森法相も対策本部の会議を欠席し、法務政務官を代理出席させていたことがわかった。森法相は地元の福島県いわき市であった書道展の会合に出席していた。私的な会合を優先していたことについて、当日の対応は万全を期していたとしつつ、次のように述べた。
「今回の指摘を真摯に受け止め反省しています」
法務省は出入国管理を担当しており、新型コロナウイルスへの対応が問われていた。森法相は出席していない会議の写真を自身のツイッターにアップし、「本日、第10回新型コロナウイルス対策会議が開催されました」と書き込んでいた。これには野党議員も、重要な会議が軽視されているのではないかと厳しく追及していた。
萩生田文科相も、会議を欠席し副大臣が代理出席した経緯を同委員会で質問された。地元の消防団長の叙勲の祝賀会に出ていたとして、こう答弁した。
「政務と公務どっちが大事なのかという指摘があれば、そこは真摯に受け止めたい」
横浜港に停泊中の大型クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号では集団感染が深刻化している。2月19日までに検査を受けた延べ3011人のうち621人の感染が確認された。5人に1人という高い割合だ。
検査で感染が確認されず、症状のない乗客については、同日から下船が始まった。同日は高齢者を中心に約500人が降りたという。対象者全員が下船するのは21日の見通しだ。
集団感染が起きたことについて、専門家で医師の岩田健太郎・神戸大教授が2月18日夜に、自身が語る動画をユーチューブにアップ。船内に同日入ってわかったという問題点を告発した。
この動画の再生回数は、2月19日夜までに約100万回を超えている。岩田教授は英語でも情報発信しており、英BBCなど海外メディアでも取り上げられた。
岩田教授は、船内はウイルスがいない安全なゾーンと、いるかもしれない危ないゾーンの区分けが不十分だと指摘。厚生労働省などの対応に問題があったと訴えた。
「まさかここまでひどいとは思ってなくて、ちゃんと専門家が入ってリーダーシップを取って、感染対策についてのルールを決めて、やっているんだろうと思ったんですけど、まったくそんなことはないわけです。もうとんでもないことなわけです」
そして、こうした実情が行政によって隠されていることにも言及。ネット上での告発に踏み切った理由をこう述べた。
「まずい対応がばれるのは恥ずかしいことかもしれないですけど、これを隠蔽(いんぺい)すると、もっと恥ずかしいわけです。やはり情報公開は大事なんですね。誰も情報公開しない以上は、ここでやるしかないわけです」
岩田教授は船内に入ったものの、厚労省側の判断で1日で追い出されたとしている。これに関して、橋本岳厚生労働副大臣はツイッターに2月19日午前、次のように書き込んだ。
「なお昨日、私の預かり知らぬところで、ある医師が検疫中の船内に立ち入られるという事案がありました。事後に拝見したご本人の動画によると、ご本人の希望によりあちこち頼ったあげくに厚生労働省の者が適当な理由をつけて許したとの由ですが、現場責任者としての私は承知しておりませんでした。お見掛けした際に私からご挨拶をし、ご用向きを伺ったものの明確なご返事がなく、よって丁寧に船舶からご退去をいただきました。多少表情は冷たかったかもしれません。専門家ともあろう方が、そのようなルートで検疫中の船舶に侵入されるというのは、正直驚きを禁じ得ません。ただの感染症蔓延地域ではないのです。本件は厚生労働省本省に伝え、なぜこのような事案が発生したか確認を求めています」
橋本副大臣の書き込みは岩田教授の告発内容には触れず、船内に「侵入」したことを問題視するようなものだ。
専門家の告発に政治家が“反発ツイート”することには、「都合の悪い情報を公開されて怒っているようなものだ」といった意見が、ネット上などで出ている。
こうした問題は2月19日の衆院予算委員会でも取り上げられた。野党側はクルーズ船内の感染症対策が不十分で、感染を抑えるために隔離したのにかえって被害を拡大したと追及した。
これに対し、加藤勝信厚生労働相は失敗は認めず次のように述べた。
「今回のオペレーションを的確にするために、横浜の現地に橋本副大臣と自見英子政務官がずっと行っている。医師でもある自見政務官から報告を受けたところ、船内の区域管理が適切に実施されているかも含め、感染管理については専門家の医師に見てもらって指摘があればその日のうちに対応している」
政府として十分に対応したと言いたいようだが、集団感染したという事実は消せない。
米紙ウォールストリート・ジャーナルが乗客の米国人医師への取材をもとに、「クルーズ船内隔離は失敗」と報じるなど、国際的に批判は高まっている。
政府の対応が不十分で情報公開も進んでいないといった見方は、国内でも広がる。「桜を見る会」の問題もあって、内閣支持率も下がってきた。3閣僚が重要な会議よりも私的会合を優先したことは、与党内からも疑問の声が上がっている。新型コロナウイルス感染症対策本部長である安倍晋三首相の責任が、改めて問われそうだ。(本誌・多田敏男、池田正史)
※週刊朝日オンライン限定記事