台湾の頼清徳総統が興味深い発言
10/5 中華民国国慶節(10月10日)の前イベントに出席した頼総統は,「中華人民共和国は中華民国人民の祖国とは決してなりえない。逆に,中華人民共和国の75歳以上の民衆(筆者注:共産党が政権を取る前に中国大陸にいた人たち)にとっては中華民国が祖国になりえる」と述べた。続けて頼総統は,「中華民国は台湾・澎湖・金門・馬祖に根を下ろしてすでに75年,この階層の議論をする必要はない。もし中華人民共和国の建国を祝賀したい人がいるなら,祝賀の用語は正確にしたい。「祖国」の二文字は決して使うべきでない。」
【小笠原解説】
国民党の韓國瑜立法院長がアレンジする国慶節関連イベントで,頼総統は5分の短いあいさつをし,非常に興味深いメッセージを放った。背景としては,最近,中国で活躍する台湾の芸能人らが相次いで中国の国慶節に合わせて「祖国」を祝賀するメッセージを出して,台湾で議論を呼んでいたことがある。
民進党の政治家・支持者の心理の深層では中華民国と台湾の位置づけの葛藤があり,蔡英文前総統はそれを「中華民国台湾」と統合させた。頼総統はそれを継承したのだが,台湾側に引っ張ると思った人が多かったのではないか。
台湾側に引き寄せるなら「中華人民共和国は台湾人の祖国とは決してなりえない」と言いたくなる。しかし頼総統は「中華民国人民」と述べた。さらには,「中華人民共和国の75歳以上の民衆にとっては中華民国が祖国になりえる」と,歴史的文脈ではあるが「中華民国が祖国」という用語を使った。
これは蔡総統の過去の演説にはなかった表現で,中華民国側に引っ張った発言である。中華人民共和国と並べて中華民国が祖国という発言は,歴代の総統の発言にはなく,今回の頼総統が初めてである。
これは概念上の議論であるが,頼総統は,蔡前総統の「中華民国台湾」を継承し,自分のアレンジを加え,中華民国と台湾の矛盾を止揚する方向を打ち出したというのが非常に興味深く目新しい点だ。
これはオールド独立派の建国独立論(中華民国を解体し台湾共和国を建国する)を否定・超越する。同時に,「頼清徳は台湾独立を狙っている」という「疑頼論」を払拭する効果がある。
中国は頼清徳を独立派と位置付けて批判しているが,今回の発言をどう批判するのか興味深い。理論的には「二国論/二つの中国論」として批判するしかないが,「どっちにしても独立派」と批判し続けるのか?
「中華民国」のロジックを使って最近の一部台湾芸能人の「中国(中華人民共和国)=祖国」のメッセージに釘を刺したことも冴えている。「祖国」のくだりは若干のユーモアを感じた部分だ。そして,「中華民国は台湾・澎湖・金門・馬祖に根を下ろしてすでに75年」をもってきて,この祖国議論に蓋をする。これもクレバーだ。
今回の発言は5月の就任演説の「中華民国と中華人民共和国は相互に従属しない」の枠組みの中にあるが,新奇性がある。短い演説だが,かなりよく考えた発言,というのが感想だ。
原文出處 Yoshiyuki Ogasawara 小笠原欣幸
※総統府のサイトをシェア。演説全文と動画が視聴できる(中国語)。
張進逸 中文翻譯 原文出處
https://reurl.cc/0dRmd6
小笠原欣幸教授解說賴總統國慶晚會致詞試譯
【小笠原解說】
國民黨立法院長韓國瑜所安排的國慶相關活動中,賴總統發表了5分鐘的簡短致詞,傳達了一個相當耐人尋味的訊息。這番談話的背景,是最近在中國發展的台灣藝人紛紛在中國國慶時發布祝賀「祖國」的訊息,引發台灣社會的討論。
民進黨政治人物及支持者內心深處對中華民國與台灣的定位存在矛盾,蔡英文前總統試圖以「中華民國台灣」來整合這個概念。賴總統延續了這個思路,但許多人原本以為他會更偏向台灣的立場。
如果要更貼近台灣立場,很自然會想說「中華人民共和國絕不可能成為台灣人的祖國」。然而,賴總統卻使用了「中華民國人民」這個詞。更進一步,他還表示「中華民國可能是中華人民共和國75歲以上民眾的祖國」,雖然是在歷史脈絡下,但確實使用了「中華民國是祖國」這樣的說法。
這是蔡總統過去演說中從未出現過的表述,明顯偏向中華民國的立場。將中華人民共和國和中華民國並列,稱後者為祖國,在歷任總統的發言中都未曾出現,賴總統是首位這麼做的總統。
這是一個概念性的討論,而賴總統在繼承蔡前總統「中華民國台灣」理念的基礎上,加入了自己的詮釋,試圖化解中華民國與台灣之間的矛盾,這是非常有趣且新穎的觀點。
這種說法否定並超越了老台獨派的建國論(主張解構中華民國,建立台灣共和國)。同時,也有消除「賴清德意圖台獨」這種「疑賴論」的效果。
中國一直將賴清德定位為獨派並加以批評,對於這次的發言他們將如何批評,令人十分好奇。理論上他們只能批評這是「兩國論/兩個中國論」,但他們會否繼續批評「無論是何者都算獨派」呢?
運用「中華民國」的邏輯來回應近期部分台灣藝人「中國(中華人民共和國)=祖國」的言論,這個做法相當巧妙。在談及「祖國」的部分,還能感受到些許幽默。最後,他以「中華民國在台澎金馬落地生根已經75年」來為這個祖國議題做總結,這個安排也相當高明。
這次的發言雖然仍在5月就職演說「中華民國與中華人民共和國互不隸屬」的框架之內,但確實展現了新意。雖然是簡短的演說,但能令人感受到是經過深思熟慮的發言。