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時評

矢板明夫 : 秦剛事件の衝撃

昨年12月に中国の外相に就任した秦剛氏は、6月下旬から動静不明となり、1カ月後に解任された。中国外務省のホームページにあった秦氏の関連記事がすべて削除されたこともあり、「失脚した」との見方が有力だ。

このニュースに驚いたのは、台湾の対中関係者たちだ。秦氏は3月の記者会見で、中国の憲法の小冊子を取り出して「台湾は中国の神聖なる領土の一部だ」との前文を読み上げた。そのうえで「台湾問題は中国の核心的利益の中の核心だ。中米関係の基礎中の基礎であり、越えてはならない最初のレッドラインだ」と強く米国を牽制(けんせい)した。

台湾側の対中関係者らは「新しい外相は法律の条文を重視する人」「米台接近の阻止に力を入れている」などと分析し、秦氏の具体的な対台湾政策を検証しようとしたところ、秦氏は解任された。

「中国は恐ろしい国だ」というのが彼らの感想だ。来年1月、台湾で総統選挙が行われる。「交渉を通じて中国と信頼関係を築き、台湾海峡の平和を維持する」と訴える親中派の候補者もいる。しかし有権者からは「外交責任者が理由もなくいなくなるような国と信頼関係を築けるのか」と疑問視する声も上がる。

秦剛事件は、親中派候補にとって逆風となったようだ。

原文出處 產經新聞